絵本から児童文学へ<後編>

親から子への読み聞かせも、いつかは卒業の時期がやってきます。子どもに「自分ひとりで本を読むのは楽しい!」と思ってもらえるように、親はどんなサポートができるのでしょうか。前回から引き続き北浦和図書館のお二人に、絵本の読み聞かせから児童文学のひとり読みにステップアップしていく時に役に立つ、とっておきのアドバイスをいただきました。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 S野さん

司書歴17年。絵本にとても詳しく、すばなし、わらべうた、手遊びなどのレパートリーも豊富で、まるで頭の中に児童室がまるごと入っているかのような児童・地域係の鑑(かがみ)。趣味は料理で、作るのも食べるのも大好き。今回取り上げたチョコレートも、いつも机の中に忍ばせているのだとか。

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 U田さん

司書歴15年。やわらかい笑顔の中にしなやかさがあり、仕事のスピードも早く、いつも頼りになる存在。ラッセル・ホーバンの「フランシス」シリーズのような、ほんわかした中にくすっと笑える要素がある絵本がお気に入りなんだそう。おはなし会で披露してくれる、美しく優しい歌声も魅力です。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
「チョコレートだいすき」
出版社:ひさかたチャイルド(2009年)
価格:1,200円(税別)
「ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ」(新装版)
作:マージョリー・W・シャーマット
絵:マーク・シーモント
訳:光吉 夏弥
出版社:大日本図書(2014年)
価格:1,200円(税別)
ロアルド・ダール コレクション2「チョコレート工場の秘密」
作: ロアルド・ダール
絵: クエンティン・ブレイク
訳:柳瀬 尚紀
出版社:評論社(2005年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

前回は、子どもがひとりで読書を楽しむには「再現力」と「共感力」が大切ということで、物語の世界観に共感できるユニークなしかけ絵本をご紹介いただきました。
子どもが「読んでみたい!」と思えるような本ばかりでした。でも読書に慣れていない子が、ここでいきなり児童文学に挑戦するのは、ちょっと難しいですよね?
そうですね。ここで児童文学に挑戦するのは、まだちょっとハードルが高いかな。ここは無理せず、「再現力」と「共感力」を育みつつ徐々にステップアップしていきたいところですね。
ステップアップかあ……。たとえば、少しずつ文字数を増やしていくとか?
いえいえ、ステップアップに必要なのは文字数ではなく、頭の中でイメージを膨らませる力になる「知識」や「経験」です。いろいろな場所に出かけたり、図鑑や科学絵本で知識を蓄える、といったことです。
図鑑ですか!物語本のほうが想像力を育てられそうなイメージがあったので、そのチョイスは意外です。
さまざまな知識を増やしておくと、イメージがつかみやすくなります。たとえば「クジラ2頭分の大きさ」という表現が出てきたとき、クジラを知っているとスケール感がイメージできるでしょう?
なるほど。確かに、全くわからないものが出てきても、知識があれば物語の描写から“なんとなく”想像できますね。
そうなんです。そういった意味で科学絵本は、知識とストーリー要素が楽しめるので、絵本から児童文学へのステップアップにぴったりなんですよ。
そうやってしっかり準備運動をすることが大切なんですね。そして、準備が整ったらいよいよ児童文学デビューですが、このあたりではどの本がオススメですか?
ずばり、オススメは“謎解き”要素がある本です!
謎解き?ミステリーですか?
そうです。はじめは児童文学の文字の多さに戸惑ってしまっても、謎解き要素があると、これが意外にも長さを感じることなく読めちゃうんですよ。
ふむふむ。自分も主人公と一緒に謎を解いて、物語に参加できますもんね。続きが気になって次々にページが進むというわけですか!
そう言われると、子どもに大人気の『かいけつゾロリ』や『おしりたんてい』も、謎解きの要素がありますね。
ハラハラドキドキのスリルを味わえるのも、愛される理由のひとつなんでしょうね。そこから興味を持ち、『シャーロック・ホームズ』シリーズや江戸川乱歩作品のような、本格推理小説に入っていくような子もいるんじゃないでしょうか。
科学絵本で準備運動をして、徐々にひとりで読む力を養い、いよいよ次は目標の本格的な児童文学の本ですね!何かオススメの一冊はありますか?

では、絵本から児童文学へのステップアップのゴールにぴったりの『チョコレート工場の秘密』をご紹介します。
あ!これはジョニー・デップが出てた映画『チャーリーとチョコレート工場』の原作ですね!
そうなんです。でも映画を知らなくても、子どもたちに身近なチョコレートが出てくるお話なので、きっと読みやすいはず。
これがひとりで読めたら自信がつきますね。では、『チョコレート工場の秘密』をゴールとしたら、そこに行くまでの科学絵本や謎解き要素のある本は、どういったものがいいんでしょう?
まず、準備運動となる科学絵本には、チョコレートつながりでこちらの『チョコレートだいすき』を。これを読んでチョコレートの知識があれば、『チョコレート工場の秘密』を読んでいても知っていることがたくさん出てきて楽しめますよ。
写真と絵をじっくり堪能しながら、「チョコレートはこうやってできるんだ!」と知識を深められます。読んだ後に、親子でチョコレートを食べると盛り上がりますよ。
それから、次のステップの謎解き要素がある本には、こちらの『きえた犬のえ』がオススメです。
あ、これもチョコレートつながりですか?
残念ながらチョコレートは出てきません(笑)。でも、おいしそうなパンケーキが出てきます!
謎解きの内容ですが、起こる事件は怖いものではなく、子どもたちに身近なものなのでご安心を。
子どもに身近でありながら、大人が読んでも唸ってしまう展開なので、お父さん、お母さんもぜひ一緒に読んでみてください。
これは続きが気になって、あっという間に読んでしまいそう。『チョコレート工場の秘密』までのステップアップの道筋が見えてきました!こんな風に進むといいんですね。
それにしても図書館って、本の紹介だけではなく、本との付き合い方までも教えてくれるんですね。知りませんでした!
どんな本が読みたいのか、はっきり決めていなくても大丈夫。本が苦手な子や、これから挑戦したいと思っている子でも楽しめる絵本や児童文学はまだまだたくさんあります。ぜひお気軽にお近くの職員にご相談くださいね。
今回セレクトしていただいた本
「チョコレートだいすき」
出版社:ひさかたチャイルド(2009年)
価格:1,200円(税別)
「ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ」(新装版)
作:マージョリー・W・シャーマット
絵:マーク・シーモント
訳:光吉 夏弥
出版社:大日本図書(2014年)
価格:1,200円(税別)
ロアルド・ダール コレクション2「チョコレート工場の秘密」
作: ロアルド・ダール
絵: クエンティン・ブレイク
訳:柳瀬 尚紀
出版社:評論社(2005年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます