歌や呪文でアラ不思議!

絵本の中には、歌や呪文が出てくるお話がたくさん。でも、上手に歌える自信がなかったり、ちょっと恥ずかしいと思ってしまったりと、なんとなく苦手意識を感じてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、そんな方でも子どもと楽しく盛り上がれる、ユニークな面白さいっぱいの「歌や呪文が出てくる絵本」を、中央図書館のお二人にご紹介いただきました。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立中央図書館
児童サービス係 T井さん

司書歴19年。シュールな味わいの絵本がお気に入りで、お子さんに読み聞かせをするようになってからは、物語性の豊かなものも好むようになったそう。知識と経験を持ち、優しく頼りになるT井さんは、Y口さんにとって「いつかこうなりたい!」と思えるお姉さん的存在です。

さいたま市立中央図書館
児童サービス係 Y口さん

司書歴1年。2年目とは思えぬ安定感を持ち、いつも笑顔で仕事をこなすY口さん。子どもとの接し方がとても上手く、「なるほど、そう言えばいいのか!」とT井さんが勉強になることも多いのだとか。体を動かすことが好きで、休日はテニスやピラティスをするアクティブな一面も。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
「ひみつのひきだし あけた?」
作:あまん きみこ
絵:やまわき ゆりこ
出版社:PHP研究所(1996年)
価格:1,200円(税別)
「めっきらもっきら どおん どん」
作:長谷川 摂子
絵:ふりや なな
出版社:福音館書店(1990年)
価格:900円(税別)
「ひみつのカレーライス」
作: 井上 荒野
絵: 田中 清代
出版社:アリス館(2009年)
価格:1,400円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

今回のテーマは、「歌や呪文でアラ不思議!」。中央図書館のお二人に、歌と呪文が登場するユニークな絵本をご紹介いただきます。
歌が出てくる絵本といえば、やっぱり『ぐりとぐら』ですよね。ひとまずそれは外すとして……。
定番ですしね。でも、同じやまわきゆりこさん(が挿絵)の絵本には、ユニークな歌が登場するものが他にもたくさんあって、たとえばこの本も。
ひみつのひきだし あけた?』ですか。タイトルだけでワクワクします!おばあちゃんが主人公の絵本なんですね。
主人公のチイばあちゃんが、ねこの「とらた」と一緒に、なくしものの“かぎばり”を探すおはなしです。
タイトルでおわかりかと思いますが、このチイばあちゃん、ひきだしに何でもかんでも入れてしまうクセがありまして。
わぁ、ひきだしの中が「するするするする…」ってどんどんどんどん伸びていくんですね。これは確かに何でも入れたくなるわけだ!
それにしても、ひきだしを伸ばすために、壁に穴まで開けてしまうとは!
小さい家だから簡単って、そういう問題じゃないですよね(笑)。「え!?こんなものも入ってるの!?」って、親子でお話が弾むと思いますよ。
なくしものが見つかってから歌う、とらたの歌もとってもかわいいんです。ぜひそちらにも注目してみてくださいね。

私からは、この『めっきらもっきら どおん どん』を。絵本の中の呪文をまるまる覚えてしまったほど、大のお気に入りなんです。
とっておきの絵本なんですね!初めて読まれたのはいつ頃ですか?
去年です。初めて読んだ時、「うわーっ」って思わず鳥肌が立ってしまったんですよ。そこで保育園訪問の時に読み聞かせをしたら、子どもたちの反応がすごく良くて。みんな「めっきらもっきら」の大合唱。
このカンタくんが主人公なんですね。あ、この「めっきらもっきら」って、この子が適当に言った言葉なんだ。
そう、それがふしぎな三人組がいるへんてこな世界に行く呪文だった、というわけなんです。“もんもんびゃっこ”と、なわとびを135回とぶ場面では、その数字の部分に、必ず子どもたちから「えー!そんなにたくさん!」って声が挙がるんです。それがとってもかわいくて。
小さい子にとって、100を超える数は想像を絶する数なんですね。かわいいなぁ。
なんというピュア!そして、汚れちまった悲しみにくれる私(笑)。私たち大人はきっと、妖怪には会えませんね。
子どもにしか感じられない世界ってあるんですよね。そういう特別な世界の話って、絵本ならではの大きな魅力ですよね。
私も子どもの頃にこの本に出会えていたら、きっと妖怪に会えるって信じたと思います。
カンタという名前も登場する遊びもどこか昔懐かしくて、読んでいる大人まで楽しくなる一冊です。

どこかレトロで昭和な雰囲気といえば、この『ひみつのカレーライス』もオススメですよ。主人公の男の子のカレーライスに入っていた「カレーのたね」から始まるんですが……。
カレーのたね!?なんですか、それ。
ふふふ、食いつきましたね。文字通り、カレーがなる木のたねです。たねなので植えて育てるのですが、ここで必要なのが今回の呪文なんです。
読む時はカレーの準備をしてからですね!これ、いつ頃の本なんですか?
これだけ昭和の匂いを漂わせながら、なんと初版は2009年。11年前の作品です。
ええっ。もっと昔かと!だって、着物に割烹着のお母さん、着物のお父さん。呪文で育つカレーのたねという奇想天外なお話に昭和初期の世界観を合わせた、その発想がすごい!
ストーリーだけ読んだら、普通こんなお父さんだとは想像しませんよね。
たしかに。このお父さんの絵だけ見たら、冗談も言わなそうなカタブツなイメージ。踊り出すなんて想像できない(笑)。
「ばっかもーん!」って怒鳴ってきそうな、ファミリーアニメの世界ですよね。
アニメ…、なるほど。昭和40年代生まれの私にはテレビドラマの世界だったけれど、20代にはアニメの世界なのか。そういう意味では、今の子どもたちからすると、現実味が薄く架空の世界のように感じるのかも。
このミスマッチ感は大人にも受けますよね。お父さんもお母さんも近所の人も、みんな実際に昭和にいそうなのに、カレーのなる木にまったく驚いてないところも面白い。
カレーの中からカレーのたねを見つけても、案外普通に受け止めちゃってますよね(笑)。カレーの実の摘み取り方や育て方など、何気に設定にこだわりがあるのもポイントです。
大人が読んでもこんなにインパクト抜群なんだから、子どもが読んだらずっと忘れられない一冊になりそうですね!
そうですね。「めっきらもっきら」もそうですが、呪文も耳に残るリズムだから、記憶に残りやすいんじゃないかな。
呪文って、もとからあるきちんとした言葉ではなく、知らない人が聞いたら「何それ?」っていう、単なる変な言葉でしかない。おはなしを知る人だけの“合言葉”とも言えますね。
呪文がひみつの合言葉、というわけですね。ところで、絵本を読む時って、歌や呪文のところはしっかり歌ったほうがいいとか決まりはありますか?
特に決まりはないですが、図書館では節やメロディをつけずに読むことが多いですね。本との橋渡しをする立場なので、子どもに先入観を植え付けないように意識しています。
エンターテイメント的にはキャラクターをはっきりさせたほうが面白いとは思いますが、それを想像の中でどうとでもできるのが、映像とは違う絵本の良さだと思うんです。歌や呪文は、五・七・五調のような日本人のリズムに合う文体になっているものが多いので、歌はなくてもそれなりに楽しく読めますよ。
なるほど。じゃあ、歌唱力に自信がなくても安心ですね。親子で一緒にカレーの呪文を唱えてカレーライスを食べると、とっても盛り上がりそう。
カレーを食べるとき、ひょっとしたらカレーのたねが出てくるかもって、ドキドキしちゃいますね。さっそく、今日の晩御飯はカレーにしよう!
今回セレクトしていただいた本
「ひみつのひきだし あけた?」
作:あまん きみこ
絵:やまわき ゆりこ
出版社:PHP研究所(1996年)
価格:1,200円(税別)
「めっきらもっきら どおん どん」
作:長谷川 摂子
絵:ふりや なな
出版社:福音館書店(1990年)
価格:900円(税別)
「ひみつのカレーライス」
作: 井上 荒野
絵: 田中 清代
出版社:アリス館(2009年)
価格:1,400円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます